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# 米田知子展@原美術館(後編)
ではでは、後編。

■立ち上がる都市
イタリアの未来派の芸術家ボッチョーニの作品「立ち上がる都市」からタイトルをパクった(本人談)シリーズ。機械産業が目覚ましい発展を遂げた、まさに未来派の理想が現実になりかけた(←テキトーです)1930年代くらいの工場の今を写している。その頃に開業したイタリアの繊維工場は今は廃墟になり、ジプシーが住み着いている。彼らの生活用品が床に置かれている様子を撮った静物画ならぬ静物写真となっている。廃墟となった鉄鋼所にはずらりとタイムカード(?)が並んでいる様子からは、現実には見えないはずのかつての活気のある工場の気配を濃く感じる。話は逸れるが、個人的に1920年代前後の美術が好きだ。明確な思想が羨ましくもあり、まだ見ぬ未来に向かっての前向きな創作意欲は今考えてもアバンギャルドだ。MAVOなど同時代の日本の芸術シーンも興味深い。しかし、時代の熱は時に間違った方向に事を進める。現在の熱は、いったいどんな熱だろうか。と、この展覧会に関係ないけど呟いてみた。

■信じがたきものの断片
一目見ただけでは一体何を写したものかわからなかった。タイトルを見てもピンとこなかった。「アドルフとエヴァのソファ」と「A.H.のかけら」の2作品での主役は、アドルフ・ヒトラーだった。降伏の前々日、ヒトラーとエヴァは地下壕で挙式し、その翌日、2人は自殺しソファに倒れた。ヒトラーの遺体が敵の手に渡るのを免れたいドイツは、大量のガソリンをかけて焼却されたが、あとから見つかった頭蓋骨の部分はモスクワ公文書館に保存されている。悪夢のような歴史の断片。

■見えるものと見えないもののあいだ
通称「眼鏡シリーズ」と呼ばれているもので、「シーン」と並ぶ米田さんの代表作。歴史上の人物が実際に使っていた眼鏡を通して、その人物に関係する手紙を撮影したもの。マハトマ・ガンジーの眼鏡から「沈黙の日」の最後のノートを、フロイトの眼鏡からユングのテキストを、マーラーの眼鏡から交響曲第10番の楽譜を、ジョイスの眼鏡からシルヴィア・ビーチへの手紙を、など。眼鏡を通してテキストのどの部分に焦点を合わせるかは、学芸員などと相談して選んでいるそうだ。残念ながら、外国語のテキストが読めないし、何が書かれているかという情報は展覧会にはない。しかし、ひとつだけ読めたのは谷崎潤一郎から松子夫人への手紙。忘れてしまったが「わたしをいやしいと思わないでください」というような文面だったと思う。カメラ&眼鏡という装置で、見る側(眼鏡の持ち主)に否が応にも寄って見てしまう。今まで見えてなかった見る側の思いに寄ってしまう。寄ったところで大した基礎知識もないので寄れる範囲は限られるし、言ってしまえば本人のみぞ知る領域なのだが、こうして考えると米田さんの作品はすべて何かに“寄る”という行為にひたすら誠実な気がする。ちなみに今展覧会の初出品されたのはブレヒトの眼鏡を通してみたベンヤミンの献辞。ブレヒトの「三文オペラ」の「人間の努力の至らなさの歌」からの一文だったっけなあ。ナチ台頭の時代に書かれたものだ。

■パラレル・ライフ
今回の展覧会のために撮られたシリーズ。ゾルゲを中心とする国際諜報団の密会場所を撮影している。このシリーズはサイズが小さく、ソフトフォーカスのような写真。古いカメラをレンズの汚れもそのままに、リタッチせずに使ったのだという。また、写真の小さいサイズも小さい方がスパイにふさわしいだろうとも。密会場所になっているのは、東京宝塚劇場、上野公園、平安神宮、帝国ホテル、東京都美術館、小石川植物園、六甲山など、メジャーな場所だ。普通の人々が行楽やらで訪れる一方、パラレルな世界では諜報のやりとりもあり、歴史が動いていたというわけだ。そういう目で見ると、場所の風景がガラリと変わる。実際に諜報団の誰が会った場所かも書いてあるのだが、いろんな視点に乗り換えるのって面白い。ちなみに上野動物園に写っているのはパンダ。期せずして、先きの冬に亡くなったパンダの写真を見ることとなった。

■雪解けのあとに
ソビエト連邦に翻弄された時代を通過し、劇的に変化したハンガリーとエストニア、2つの国を撮影したシリーズ。ハンガリーは水を、エストニアは森をモチーフにしている。ハンガリーではかつてスターリン・シティと呼ばれた町の室内プールの恋人達や、泥風呂に健康増進に務める中高年が水着姿で集う様子を、エストニアではレジスタンス活動を続けていたフォレストブラザーズを支援する農家の前に立つ人、窓から臨むソビエト国境警備所など。

■ワン・プラス・ワン
北アイルランドのカトリック側、プロテスタント側を撮影。

展覧会の内容は以上おわり。いろんな発見があったので、感想文も残したいんだけど後日。
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